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臭化メチル全廃と代替技術普及の現状

平成14年11月25日 「新農林技術新聞」
農林水産省生産局植物防疫課まとめ
【臭化メチル出荷量の推移】
 
表1:臭化メチルの用途別国内向け出荷数量
用途 1991
基準年
1998 1999 2000 2001
土壌用 6,269 5,336 4,391 3,884 3,016
検疫用 2,848 1,679 1,876 1,591 1,480
その他 219 269 517 589 613
合計 9,336 7,284 6,784 6,064 5,109
注1: 生産資材課調べ
注2: 年は暦年
注3: 「その他」には工業用原料、文化財等のくん蒸用等を含む
臭化メチル剤は、線虫、害虫、ウイルスなど多種類の病害虫及び雑草に対して安定した効果を発揮する優れた薬剤であるが、1992年のモントリオール議定書締約国会合においてオゾン層破壊物質に指定され、検疫用途などを除き、1991年の生産量を基準値として2001年に50%の削減、2003年には70%の削減が行われるとともに、2005年に全廃することが決定された。
 臭化メチルの削減の情報は表1のとおりで、土壌用の臭化メチル出荷量は2001年には3016トンになっている。2003年には70%の削減を迎えるので、さらに減少し、1800トン程度になることが予想される。また、景気の低迷などにより木材の輸入量が減少しており、検疫用の臭化メチルの出荷量も減少傾向にある。
 PMMV及びCGMVなどの土壌伝染性ウイルス病については、引き続き代替技術の確立を強力に推進する必要がある。
【代替薬剤の出荷量・技術とコスト】
 土壌処理に使用される主な土壌処理剤の出荷量の推移は下図のとおりである。
 臭化メチルが削減スケジュールに従って、段階的に減少しているのに対し、他の代替薬剤はD-D剤を除いてほぼ横這い傾向で安定している。
 代替薬剤はクロルピクリンが主流であるが、ホスチアゼート剤やダゾメット剤など、処理時に刺激臭がなく、作業しやすいものが歓迎されている傾向もあるようだ。
 また、臭化メチルが主に使われてきた作物・対象病害虫に対する各代替薬剤・技術、及びそれらの臭化メチルに対するコスト比は表2のとおりである。
 臭化メチルの代替薬剤・技術はこの表に挙げたもの以外にもあり、それぞれ代替薬剤・技術への転換が着実に進んでいる。コストについては、地域によって変動する可能性も含めると、代替技術は臭化メチルと同等程度のコストと考えられる。
表2:普及中又は普及の見通しがある代替技術の臭化メチルに対するコスト比(植物防疫課調べ)
対象作物 対象病害虫 代替技術 コスト比(%)*
すいか つる割れ病、センチュウ クロルピクリン剤
クロルピクリン・D-D剤
35-110
メロン つる割れ病 抵抗性台木
抵抗性品種
100
きゅうり 苗立枯病、萎凋病
センチュウ
ダゾメット剤と太陽熱処理 35-67
いちご 炭そ病、萎黄病
雑草、センチュウ
ダゾメット剤
クロルピクリン・D-D剤
メチルイソチアネート
70-120
トマト センチュウ、雑草 ダゾメット粒剤 60
ピーマン 青枯病、疫病、センチュウ クロルピクリン・D-D剤 69
花卉 萎黄病、炭そ病
センチュウ
ダゾメット粒剤
クロルピクリン剤
110
雑草 カーバムナトリウム塩 70
萎凋病 蒸気消毒+ダゾメット剤 120
なす 青枯病、萎凋病 クロルピクリン剤 90
*機械及び補助器具の購入費、処理時間、処理労力などを含まない既算値
熱水や蒸気利用、太陽熱処理など技術開発促進
【臭化メチル代替薬剤・技術の開発及び普及】
 臭化メチル剤の代替薬剤・技術の開発及び普及を促進するため、既存化学物質の代替剤としての可能性の確認及び製剤化を中心に、代替薬剤の効果的使用方法、熱水や蒸気を利用する方法、太陽熱処理、あるいはそれらの方法を組み合わせて処理効果を高める方法、他には大気中への臭化メチル放出抑制技術の開発などが国、都道府県試験場などで実施されている。
還元消毒法の改良型など簡便で低コスト技術開発も
【臭化メチル削減対策会議】
 2002年2月に発足した「臭化メチル削減対策会議」は、2002年7月に第6回会議が行われ、各方面で取り組んでいる以下の代替薬剤・技術などが紹介された。
 熱水土壌消毒機は開発メーカー各社がそれぞれの特徴を生かした製品開発をしており、様々な改良が進み、問題となっているコストダウンも図られてきている。
 熱水処理は粘土質など通水性の悪い土壌では仕様に工夫が必要ではあるが、土壌伝染性のウイルス病に対してある程度の効果を発揮している。その効果は不確定ではあるが、今後の試験で見通しが立つ可能性がある。
 また、最近ではフスマなどを施用する還元消毒法の改良型や小型蒸気消毒機の利用技術など、より簡便でコストのかからない消毒方法の確立を目指した開発が目立ってきている。他に新規薬剤であるヨウ化メチルはガスの拡散性向上や薬害回避、コスト低減などの問題がクリアーされれば有望な剤であること、臭化メチルの使用目的で多いのは雑草防除であるが、代替薬剤でも処理方法を守り、確実な処理を行えば十分に効果的であることなども紹介された。
厳しい不可欠用度の基準、使用認定にも険しい道程
【臭化メチルの不可欠用度申請】
 2002年7月23日〜25日、モントリオール議定書締約国会合第22回作業部会が開催された(於:カナダ)。会合では臭化メチルの不可欠用度申請の手引きとなるハンドブックが5月31日にウェブサイト(http://www.teap.org/)に公開されたことにより、臭化メチルの不可欠用度申請に関連する質問・意見が日本を含めて各国から相次いだ。
 不可欠用途申請とは、2005年の臭化メチル全廃後であっても、事前に締約国会合事務局に対して臭化メチルの使用が不可欠である旨を申請し、その申請が締約国会合で審査され、モントリオール締約国会合の決議W/6の「不可欠用度の基準(上記アドレスに公開されているハンドブックに記載)」のすべてに合致する場合はその使用が認められるという特例措置である。
 しかし、本来なら廃止されるべき環境破壊物質が使用できる特例であるため、その使用の是非を決定する審査は、専門機関で厳正に行われ、しかも「不可欠用途の基準」も厳しく、不可欠用途使用の認定を受けることは相当厳しいものと考えている。
 また、仮に申請が不可欠用途と認定されても、代替技術が確立するまでの措置であり、使用量を事務局に報告する条件なども付加される。
 農林水産省は、平成14年度病害虫防除に関わる臭化メチルの不可欠用度申請調査書の受付を都道府県を窓口として実施した。現在、提出された申請調査書はとりまとめ中である。とりまとめ後は、締約国会合事務局への申請手続きを進めることとしているが、農林水産省は、今後も臭化メチルに頼らない防除への転換のため、代替技術の開発、代替薬剤の登録拡大及びこれらの普及定着の推進を主眼としていく。
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