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平成14年度 病害虫発生状況と来年の対策

水 稲 の 害 虫

平成14年11月25日 「新農林技術新聞」
中央農総研セ虫害防除システム研究室長 鈴木 芳人
 春から6月前半まで全国的に高温傾向が続いた今年は、斑点米カメムシ類の雑草地などでの発生が早期から目立ち、昨年よりは少ないものの30都道府県から斑点米カメムシの注意報・警報が発表された。その後西日本では9月までに概して高温・少雨で経過したが、北日本では間欠的に低温に見舞われた。
 斑点米被害の実態はまだ不明であるが、本年の気象条件から西日本では平年以上の発生が予測される反面、北日本では1999年のような大被害はなかったと見られる。
 海外飛来性害虫の飛来は少なく、なかでもトビイロウンカの少飛来は記録的であった。その一方で、近年の防除法の変化に伴い、一部の害虫が復活し始めている。
 当面する最大の課題である斑点米カメムシ類の対策をどう改善するか、海外飛来性害虫の少飛来は今後も続くのか、一部害虫の復活にどう対処するのか、この3点に焦点を絞り、最新の情報を整理してみたい。
斑点米カメムシ類・・・防除適期は乳熟期前、発生源管理が課題に
【斑点米対策の改善】
 斑点米カメムシ類の発生生態については未解明な点が多々残されており、発生量を高精度で予測することは今なお難しい。しかし、精力的な研究によって斑点米の発生機構と各種の防除対策の効果が次第に明らかになり、主要発生種や発生頻度を踏まえた対策が各地で展開されている。
 本田における化学的防除では、従来は穂揃期頃の成虫防除にウエイトが置かれていた。しかし、この時期の防除では次世帯の幼虫発生を十分に抑えられないことが多い。精玄米に残る斑点米は主に幼虫による加害で生ずることを踏まえて、最近は防除適期を乳熟期以後に設定する県が主体になっている。ただし、カスミカメムシ類では乳熟期より前の加害粒でも斑点米としている。
 米の主産地では3回防除を基幹とし、その後も発生を確認したら臨機防除を実施することを推奨している。畦畔を発生源とするカメムシ主体の地域では、畦畔を含む額縁防除を推奨する地域が増えている。
 薬剤防除のための要防除水準は、多くの都道府県で設定されており、発生種や品種別に決められているケースもある。しかし、設定された水準には大きなばらつきがある。
 カメムシの水田内における増殖率の年変動は大きく、固体当たりの加害量も気象条件などに依存するために、出穂期のカメムシ密度に基づく斑点米の発生予測には限界がある。カメムシ密度と斑点米発生率の関係をみても、斑点米率0.1%近傍のデータには相関がほとんど見られない。
 さらに要防除水準が極めて低いために、精度の高い密度推定自体も難しい。現段階では定性的ではあるが、要防除水準を目安として、栽培時期と品種、過去の発生、登熟期の気象予報、主要種の発生時期を加味して防除要否を判断するのが現実的である。登熟期の高温が助長する割れ籾発生は、カスミカメのほか多くのカメムシ類の加害を増加させる。
 要防除判断に役立つ情報として、主要種の発生時期の予測が発生予察情報に盛り込まれることが望まれる。
 薬剤防除とともに重視されてきたのがカメムシの発生源の管理である。畦畔などの発生源を出穂2週間前までに除草することが防除対策の基本に据えられている。
 しかし、その効果についてはまだ十分に解明されておらず、アカヒゲホソミドリカスミカメに関する実証試験では、その効果について否定的な結果も少なくない。
 実用的かつ効果的な発生源管理は、今後の課題として残されている。色彩選別機による斑点米対策はすでに広範に導入されている。
ジェット気流減少で発生注意報・警報皆無に
【海外飛来性害虫】
 海外飛来性害虫の発生は年次変動が激しい。1980年代の後半から1990年代の初めにかけて多飛来が続いたセジロウンカとトビイロウンカ、その後も1996年頃まで飛来量が多かったコブノメイガはいずれも、近年は飛来量が減少している。
 今年は10年ぶりに海外飛来性害虫の発生注意報・警報が皆無となった(下表)。
 飛来量が減少した理由の一つは、中国華南と日本を結ぶ下層ジェット気流の発達頻度の減少である。通常は飛来のピークを迎える7月上中旬の下層ジェットの出現頻度が最近は激減している。このほかにトビイロウンカについては、飛来源地帯における発生量の減少が関与している。
 一方、セジロウンカは一次飛来源とみなされるベトナム北部で1990年代中頃から大発生が続いている。ただし、北ベトナム・中国華南ともに近年はブプロフェジン、イミダクロプリドなどによる薬剤防除が強化されている。
 少飛来は今後も続くのだろうか。残念ながら来年の下層ジェット気流の出現は予測できない。経験的事実として、エルニーニョの翌年にはトビイロウンカが大発生する確率が高いことが知られている。そのメカニズムはまだ不明であるが、今年はエルニーニョ現象が出現しており、来年は警戒を要する年にあたる。
 トビイロウンカの増殖率は飛来時期が早くセジロウンカの発生が少ないと高まること、本種をはじめ海外飛来性害虫はその脅威を忘れたころに大災害をもたらしてきたことに留意したい。
種/年 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
斑点米カメムシ類 6 9 8 11 1 5 3 18 8 8 17 36 35 30 195
セジロウンカ 4 27 35 0 5 1 2 0 1 0 0 3 0 0 78
トビイロウンカ 0 16 18 0 4 0 0 0 2 19 1 0 0 0 60
コブノメイガ 0 7 2 0 9 3 7 4 0 2 1 0 1 0 36
イネミズゾウムシ 9 3 3 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 17
ニカメイガ 2 0 1 0 0 2 1 3 0 1 0 0 0 0 10
アワヨトウ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 3 0 8
ヒメビウンカ 1 1 2 1 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 7
イネドロオイムシ 0 0 0 0 0 1 1 1 2 1 0 0 0 0 6
コバネイナゴ 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
イネヒメハモグリバ 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
スクミリンゴガイ 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1
ツマグロヨコバイ 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1
イネクロカメムシ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
本田防除省略や使用薬剤変更で、ツマグロヨコバイなど復活
【防除法の変化に伴う害虫の顕在化】
 本田防除の省略や使用薬剤の変更に伴って、これまで発生が抑制されていた一部の害虫が復活した事例が報告されている。特に目立つのがツマグロヨコバイとそれが媒介する黄萎病・萎縮病、イネクロカメムシ、斑点米の原因となるイネカメムシ、イチモンジセセリ、フタオビコヤガであり、イネクロカメムシについては今年注意報を発表した県もある。
 このほかに、水田初期害虫のイネドロオイムシではフィプロニル剤に対する抵抗性発達が北日本・東日本で拡大しつつある。いずれもまだ局所的な問題に留まっているが、今後の発生動向に十分注意したい。他の土着害虫についても薬剤抵抗性の発達については警戒が必要である。
 過去の害虫の発生状況に応じて育苗箱施薬の要否を判断することは経済的メリットがあるだけでなく、薬剤抵抗性発達を遅らせる上でも有効である。
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