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平成14年度 病害虫発生状況と来年の対策

野 菜 の 病 害

平成14年11月25日 「新農林技術新聞」
野菜茶業研究所果菜研究部病害研究室長 西 和文
 平成14年も、野菜類には多くの病害が発生した。九州各地ではいちご炭そ病の発生が目立ち、5月下旬から6月にかけて相次いで発生注意報が出された。発生注意報は、徳島県(ほうれんそうべと病)、高知県(ピーマンうどんこ病)、大分県(果菜類の灰色かび病)など施設野菜の病害、青森県(にんにくさび病)、千葉県(キャベツ菌核病)、愛知県(たまねぎべと病)、沖縄県(にがうりうどんこ病・かぼちゃ灰白色斑紋病)などの露地野菜でも出されている。
 新病害や新ケースの出現、既発生病害の発生地拡大、臭化メチル使用期限の切迫など、野菜病害をめぐる問題は複雑化している。
 平成14年の野菜病害の発生状況を踏まえ、今後問題となりそうな病害について解説する。
ポスト臭化メチル柱
【土壌伝染性病害】
 施設野菜を中心に、今後も恒常的な問題となりそうなのが土壌病害である。なかでもトマト青枯病、萎凋病、根腐萎凋病、褐色根腐病、メロンつる割病、黒点根腐病、ほうれんそう萎凋病などの病害に対する防除対策の練り直しが急務の課題となっている。
 従来これらの病害は臭化メチルを用いた土壌くん蒸処理によって防除されてきた事例が多かったが、周知のように臭化メチルの生産は、特別の用途を除き2004年末で打ち切られる。
 現在、特別の用途としての申請準備が農林水産省で開始されているが、農業分野での使用が特別の用途として認められる可能性は低いと見られている。
 ポスト臭化メチルの新しい防除体系については、代替農薬による土壌消毒か物理的消毒法の採用が主な柱になると思われる。代替農薬としてはクロルピクリンくん蒸剤、D-D剤、MITC剤、ダゾメット剤、カーバム剤、ホスチアゼート剤などが有力である。
 物理的消毒法は、近年非常に関心を集めている。その背景には、ポスト臭化メチルというだけでなく、農薬への過度の依存を避けようという意識の高まりにも反映している。物理的消毒法としては8種類ほどが開発されており、そのなかで太陽熱土壌消毒法と蒸気消毒法はすでに実用に供されている。
 臭化メチル問題が具体化してから大きな関心を集めているのが熱水土壌消毒と土壌還元消毒である。熱水土壌消毒は九州各地や関東各地で、土壌還元消毒は千葉県や岐阜県などで導入を前提とした大規模な実証試験が展開されており、おおむね良好な結果を得ている。
新レース発生が確実
【空気伝染性病害】
 ほうれんそうべと病で、抵抗性品種を侵す病原菌の新レースの出現とその分布の拡大が大きな問題となっている。ほうれんそうべと病は、葉に黄色の周縁のはっきりしない大型病斑を形成する病害で、春と秋の気温8〜18℃、曇天が続くという気象条件の下で発生しやすい。第一次伝染源は被害茎葉上に形成された卵胞子であるが、種子伝染による場合も多い。
 従来、病原菌にレース1〜4が存在していることが知られていたが、近年、従来、抵抗性といわれてきた品種での発病事例が相次ぎ、新レースの発生が確実となった。「エーデルワイス」「躍太郎」「勇太郎」「マジック」などの品種がこの新レースに抵抗性であるが、地域によってはこれらの品種の羅病例も発生している。新レースの発生は全国的であり、徳島県や広島県では発生特殊報を出して警戒を呼びかけている。
 棒状は被害茎葉の処分、種子伝染の防止、抵抗性品種の利用、薬剤散布などを総合的に実施する必要がある。
トマトかいよう病多発、未発生地でも警戒の要
【種子伝染性病害】
 本年はすいか果実汚斑細菌病の発生事例がなく、関係者を一安心させているが、種子伝染が引き金になって病害の発生が始まったと考えられる事例が多い。
 近年ではトマトかいよう病、トマト、萎凋病レース3、メロンつる割病レース1、および1、2yなどがある。
 前述したほうれんそうべと病菌の新レースも、種子伝染を通じて広がった可能性がある。
 トマトかいよう病は、全国的多発傾向にある。土壌中で長く生存できること、保菌種子による伝染率が高いことから、かいよう病の既発生地のみならず未発生地においても警戒を要する。
 病原細菌は、根から侵入する場合と、雨滴の跳ね上げによって茎葉から直接に侵入する場合がある。根から侵入した場合には、最初下葉がしおれて垂れ下がる病状をみせ、次第に葉縁が巻き上がり褐変枯死する。病勢が進むと葉や葉柄、茎の内部組織が崩壊する。病原細菌が表面から侵入した場合には、白色〜褐色のやや降起したコルク状の小斑点を生じ、果実では周囲を白いハローでふちどられた鳥目状の斑点となる。
 防除には、種子消毒(55℃温湯に25〜30分浸漬)、床土消毒、土壌消毒、資材消毒、薬剤散布(カスミンボルド)、病株のぬきとり処分、摘芽時の伝染防止などが重要である。
 トマト萎凋病菌レース3は、海外から持ち込まれてきた可能性が高い。台木品種「プロテクト3」の有効性が実証されている。メロンつる割病菌レース1に対しては、「園研台木3号」「メロンパートナー」などの台木品種の使用が有効である。プリンスPF系品種で抵抗性のあるものも認められているが、現地圃場での効果は確認されていない。レース1、2yに対しては、全ての品種が羅病性である。
媒介虫の侵入防止と発病株の抜き取りを
【ウイルス病】
 トマト黄化葉巻病は、1996年に日本で最初の発生が確認された。シルバーリーフコナジラミにより媒介されるウイルス病で、病原ウイルスには東海地方で発生している系統(静岡系統)と、九州地域で発生している系統(長崎系統)の2系統が存在することが知られている。
 上位葉の葉縁が黄化して巻き上がり、病状が進むと株全体の生育が止まり萎縮する。
 防除は媒介虫の侵入防止と発病株の抜き取り処分に重点を置く。媒介虫の侵入防止には、1mm目の防虫ネットが効果的である。圃場周辺の奇主植物となりうる雑草の除去にも留意する。
 ミカンキイロアザミウマが媒介するトマト黄化えそウイルスによる病害の発生も広がっている。本年は長崎県や香川県で発生特殊報が出された。
 ミカンキイロアザミウマが多くの植物に寄生できることから、防除はなかなか困難であるが、トマト黄化葉巻病の場合と同様、媒介虫の侵入防止と発病株の抜き取り処分、圃場周辺の奇主植物となりうる雑草の除去などを実施する必要があろう。
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