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ランマンフロアブルの作用機作


  • ランマンフロアブルは植物病原菌の呼吸を阻害します。
    ランマンフロアブルの有効成分シアゾファミドは、植物病原菌の細胞中微小器官の一つであるミトコンドリア内膜上に存在する酵素複合体の一つ(複合体V)に結合し、その酵素活性を阻害する結果、膜内での電子伝達系(呼吸系、エネルギー生産系)を阻害し、病原菌を死滅させることが確認されています。
  • ランマンフロアブルの作用点は、既存剤の作用点と異なります。
    ランマンフロアブルの有効成分シアゾファミドは、ストロビルリン系殺菌剤やオキサゾリジンジオン系殺菌剤と同じ複合体Vに作用しますが、それらの作用点(結合部位)がQo部位であるのに対し、ランマンフロアブルはQi部位であることが確認されています。
    最近の専門家の研究成果により、Qo部位とQi部位は有意に離れている(20Å)ことも確認されました。このÅは、ストロビルリン系殺菌剤に対する病原菌の耐性が、Qo部位の構造変化に起因する場合でも、その構造変化がシアゾファミドの結合部位であるQi部位の構造まで変化させることのない程の十分な距離と考えられます。これは、Qo部位の構造変化がシアゾファミドの複合体Vに対する親和性に影響を及ぼさないことを意味し、ストロビルリン系殺菌剤との交差耐性が起こる可能性は低いと考察されます。
  • ランマンフロアブルの複合体V阻害活性は、種特異的です。
    ランマンフロアブルの有効成分シアゾファミドは、藻菌類のミトコンドリアに対して特異的な阻害活性を示し、他の植物病原菌、有用微生物、植物及び高等動物のミトコンドリアに対しては、何ら影響を及ぼしません。(下表参照)
    ランマンフロアブルの高度な選択性(含安全性)は、この作用点レベルの選択性に起因すると考察されます。(ストロビルリン系殺菌剤の選択性は、作用点レベルでは確認されず、生物体内のおける代謝レベルの差異によるとされています。)

ランマンの(シアゾファミド)の種選択性試験
ミトコンドリア由来 各濃度におけるミトコンドリア内複合体V阻害率(%)
シアゾファミド(µM) アンチマイシン*(µM)
100 10 1 0.1 0.1 0.01
イネ苗立枯病菌(1 100 100 97 81 100 100
きゅうり灰色かび病菌(2 16 <10 - - 100 92
酵母菌(3 30 25 <10 - 95 93
ラット肝臓 10 <10 - - 93 67
馬鈴薯塊茎 10 <10 - - 90 44
1)Pythium spinosum、2)Botrytis cinerea、3)Saccharomyces cerevisiae
アンチマイシン(試験用試薬)は、シアゾファミドの作用点と同じミトコンドリア内複合体VのQi部位に結合し、細胞の電子伝達系を阻害しますが、シアゾファミドのような種選択性は認められません。

ランマンの作用点
ミトコンドリアは、二重膜構造です。その内膜にCytochrome bc1複合体は埋まっています。
病原菌細胞の膜式図