農薬情報>殺菌剤
イネ紋枯病をはじめ リゾクトニア病害・白絹病と野菜細菌性病害に
特長
■有効成分
:バリダマイシンA・・・5.0%
:ポリ(オキシエチレン)=ニノルフェニルエーテール・・・3%
■性状:緑色澄明液体
■毒性:普通物
■魚毒性:A類相当
■有効年限:4年
■包装:100mlx60、500mlx20、5gx4、20g
■天敵・有用昆虫などに対する影響:殺虫作用は認められない。
■医療用抗生物質との関係:ヒトに病原性を示す菌に対する抗生物質との間に交叉耐性は認められない。
バリダシン液剤5は、武田薬品工業(株)が研究開発した農業用抗生物質「バリダマイシンA」を有効成分とする殺菌剤です。1972年の上市以来、イネ紋枯病菌をはじめとするリゾクトニア菌やその近緑菌(白絹病菌など)による各種作物の糸状菌(カビ)病害に優れた効果を発揮し、好評を博しております。
1989年、本剤のユニークな作用機構の一つが解明され、細菌性病害への展望が開けました。そこに焦点をあてた基礎研究の成果として、本剤はシュードモーナス属菌・エルビニア属菌・キサンモーナス属菌の増殖を著しく抑制し、発病を抑えることが判明いたしました。
1996年にキャベツ黒腐病の登録を取得して以来レタス腐敗病、はくさい軟腐病他野菜5作物の細菌性病害に適用が拡大され、2000年には果樹の細菌性病害モモせん孔細菌病、かんきつかいよう病に登録を取得いたしました。
散布後茎葉に吸収され、導管内の細菌の増殖をユニークな作用機構(糖代謝系酸素阻害)で抑制します。
液剤タイプなので作物への汚れの心配がありません。
結球後期までの防除が可能です。はくさい・たまねぎ防除では、収穫3日前まで使用できます。
高温時の散布でも薬害の心配がほとんどありません。
ユニークな作用機構により、耐性菌出現の心配はほとんどありません。
低コスト防除剤です。
イネ紋枯病をはじめとするリゾクトニア菌とその近緑菌に対する作用
強力な進展阻止効果が長期間持続します。
バリダシン散布後、圃場内のリゾクトニア菌は感染源としての力を失い、長期間その病原性が喪失されるため、長い残効を発揮します。
菌糸内を薬効が伝わる波及効果があります。
バリダシンはリゾクトニア属菌の菌糸にはよく吸収され、菌糸内を通じてバリダシンが付着していない部位の菌糸にも効果が波及する特異な作用(波及効果)を発揮します。そのため、直接薬剤が付着していない部位や葉鞘内まで、確実に効果を発揮します。
連用による耐性菌発現の可能性が極めて少ない。
バリダシンは、現在まで耐性菌が見出された事例はありません。佐賀大学で行われた耐性検定試験でも、バリダシンの耐性菌発現の可能性は極めて低いことが認められています。
いろいろな作物に影響の少ない薬剤です。
イネをはじめ多くの作物に対して影響が少ないので、広域防除にも安心して使用できます。例外として、きく(秀芳の力等)、トマトの生育期に使用すると、薬害を生じる恐れがあるのでかからないように注意して下さい。
トレハラーゼ(トレハロース分解酵素)の阻害
リゾクトニア菌体内では、必要部位に輸送されたトレハロースが酸素トレハラーゼによりグルコースに転換され、このグルコースがエネルギー源となって菌糸伸長・侵入行動などの活動が行われ、発病・被害につながります。
バリダマイシンAは、リゾクトニア属菌や近緑菌が貯蔵・輸送用の養分として利用しているトレハロースを、グルコースに分解する酸素トレハラーゼの活性を阻害します。
バリダマイシンAは散布されると菌体内にすみやかに取り込まれ、その作用が菌糸内を移行してトレハラーゼの活性を阻害し、正常な菌糸伸長や菌糸塊形成などの侵入行動を停止させ、効果を発揮するものと考えられます。
細菌性病害に対する作用
薬害の心配がほとんどなく、安全性が高い薬剤です。
対象作物の生育ステージや温度条件など、いろいろな条件下でも作物への影響が少ない薬剤です。ただし、登録外作物のトマトやきく(秀芳の力等)には薬害が出ることがありますので、かからないように注意して下さい。
他の抗生物質剤とは全く異なる作用機構です。
すでに確認されている他の抗生物質剤耐性菌に対し、交叉耐性は示しません。
液剤なので、作物への汚れの心配がほとんどありません。
トレハロース分解酵素の阻害:トレハロースを利用している細菌
トレハロース依存度の高い細菌では、リゾクトニア属菌などに対する作用と同様に、トレハロース分解酵素(トレハラーゼ等)の活性阻害によりエネルギーが得られず、細菌の増殖が抑制され、バリダシンの防除効果が発揮されると考えられます。
全身獲得抵抗性誘導
長野県野菜花き試験場試験
「植物抵抗性誘導技術を核としたレタス根腐病の総合防除」を課題とした「非殺菌物質によって引き出される全身獲得抵抗性(SAR)を利用したレタス根腐病防除試験」(1999)の結果を推定されます。
レタス根腐病菌(
Fusarium oxysporum
f.sp.
lactucae
)に対し、バリダマイシンAは直接的には全く作用を示しません。しかし、レタスに処理することによって高い防除効果を示しました。このことから、全身獲得抵抗性を誘導することが推定されました。
なす青枯病基礎試験からの知見
早めの処理によって、より高い効果を発揮する事例が確認されたことから、この「早めの処理」が抵抗性を誘導するリードダイムではないかと推察されました。
学会での発表
2001年農学学会、植物病理学会において、抵抗性誘導が示唆される研究報告がなされています。
細菌の菌体外多糖質(EPS)の変性(質的・量的変化)
菌体外多糖質(EPS)は、細菌細胞の最外層にあって、最初に植物細胞と接触する物質であるため、病原性と宿主特異性を決定する要因の一つとして考えられています。バリダマイシンAは、このEPSの生産量を、一定条件で著しく抑制します。また、質的な変化としては、導管の異変症状の程度を低下させた事例があります。
なす青枯病の生育期散布剤としてのバリダシン
なす青枯病は、その病状が激しく被害が大きいこと、伝搬が容易であること、防除が困難であること等から、全国のなすの産地で重要な病害とされています。
これまで、なす青枯病には土壌処理剤以外に適用薬剤がなく、定植後は実質的な打つ手がありませんでしたが、このたび、なす青枯病に対する初めての散布剤として登録されました。防除体系の新たな戦力として、お役立て頂けるものと期待しております。
なお、同じく青枯病が重要病害であるトマトには、薬害を生じるおそれがありますのでかからないように注意してください。
なす青枯病の特徴
病徴(萎れ⇒褐変⇒枯死)は急速に進行し、被害が甚大。
水分を含んだ土壌中で5年以上生存できる。
水によって容易に伝搬される。
多犯性でナス科植物以外にも広範の植物を侵す。
例:いちご(バラ科)、しゅんぎく(キク科)、だいこん・かぶ(アブラナ科)、しそ(シソ科)他
いったん土壌が本菌に汚染されると、土壌くん蒸剤でも防除が困難。
高温条件(25〜35℃)で発病が激しくなる。
病状
病原菌は前年の発病株の残渣で生存し、植付け後、作物の根圏で増殖して根の傷口から侵入する。
病原菌は導管内で急速に増殖し、根からの水分吸収・移動を妨げる。羅病作物は、十分な潅水をしても、日中上位の茎葉から青いまま萎れる。
さらに病徴は急速に進行し、株全体の茎葉が褐変して萎れ、枯死する。圃場内で数株が発病すると、ごく短期間のうちに周囲の株にも感染する。
なす青枯病の防除対策
播種前
羅病性作物の連作を避ける。
地下水位の高い圃場では高うねにし、水はけをよくする。
青枯病耐性品種を選ぶ。
育苗用培土、床土を消毒する。
定植前
抵抗性台木に接ぎ木する。
クロルピクリン剤やダゾメット剤等で土壌消毒する。
定植後
発病株を残さず処分する。
バリダシン液剤5を発病剤から早めに散布する。
バリダシンの上手な使い方
バリダシン液剤5の500倍液を10〜14日間隔で散布してください(8回以内)
普通露地栽培(5〜6月頃定植)
暖かく、栽培期間を通して病原菌の生育が旺盛なこの作型では、梅雨明け以降から発病が急激に進むため、定植活着直後から散布を開始してください。
促成・半促成栽培(9〜12月頃定植)
例年の発病状況から初発の時期を予測し、初発のおよそ1か月前頃(なすの根が菌の棲息域に到達する少し前から)散布を開始してください。
抵抗性台木を利用し、クロルピクリン剤やダゾメット剤等の土壌消毒剤と体系処理をしてください。
青枯病菌の増殖を抑え、発病を遅延させて収量増を図るために、早め、早めの防除を心掛けてください。
バリダシンの効果
バリダマイシンの青枯病菌に対する抗菌活性
バリダマイシンA濃度(ppm)
100
25
6.3
1.6
無処理
0
0
0
1
5
H7 武田薬品農業科学研究所
0:生育なし〜5:旺盛な生育の、6段階で評価。
Czapek- トレハロース培地上で、30℃で4〜7日間培養。
バリダマイシン処理による、なす青枯病菌の増殖抑制効果を示す阻止円
(H5 武田薬品農業科学研究所)
バリダマイシンの青枯病菌進展阻止効果
H9 武田薬品農業科学研究所
品種
:
千両2号
播種
:
3/26
定植
:
5/20
処理
:
6/19、29 200ppm液散布
調査
:
7/9
クロルピクリン+バリダシンで効果が上がる
H9 (社)日本植物防疫協会研究所
薬剤名
維管束褐変度
バリダシン液剤5 500倍+クロルピクリンくん蒸剤 併用
35.6
クロルピクリンくん蒸剤 単用
57.8
無処理
100
品種
:
千両2号(台木:ヒラナス)
定植
:
5月15日
区制・面積
:
1区16m² 15株
発生状況
:
多発生
クロルピクリン処理
:
4月30日
バリダシン処理
:
5月19日から8月4日まで、7〜10日間隔で散布
調査
:
8月15日
発病遅延によって収量が増加
H7 大阪府農林技術センター
品種
:
水なす(台木:アカナス)
処理
:
5月23日から1週間毎に3回 1000倍液散布
平成7年大阪府農林技術センターの現地試験によると、バリダシン液剤5の処理により、青枯病の発病遅延効果が認められ、この発病遅延による5月から6月の増収効果は10アール当たり約900kgで、収益に大きく貢献することが予想された。(参照:上記グラフ)
黒腐病/キャベツ
腐敗病/たまねぎ
軟腐病/はくさい
(病原細菌:キサントモーナス・キャンペストリス)
(病原細菌:シュードモーナス・マージナリス、エルビニア・ラ本ティ)
(病原細菌:エルビニア・カルトボーラー)
腐敗病/レタス
すそ枯病/レタス
株腐病/キャベツ
(病原細菌:シュードモーナス・チコリー、シュードモーナス・マージナリス、シュードモーナス・ビリデフラバ)
(病原菌:リゾクトニア・ソラニー)
※腐敗病とすそ枯病の同時防除が可能です
(病原菌:リゾクトニア・ソラニー)
※黒腐病と株腐病の同時防除が可能です
適用病害と使用方法
作物名
適用病害虫名
希釈倍数
使用液量
使用時期
本剤の使用回数
使用方法
バリダマイシンを含む農薬の総使用回数
もも
せん孔細菌病
500倍
-
収穫7日前まで
4回以内
散布
4回以内
かんきつ
かいよう病
500倍
収穫14日前まで
稲
紋枯病、疑似紋枯症(赤色菌核病菌)、疑似紋枯症(褐色菌核病菌)、疑似紋枯症(褐色紋枯病菌)、もみ枯細菌病
1000倍
5回以内
6回以内(育苗箱灌注は1回以内、本田では5回以内)
紋枯病
300倍
25L/10a
稲(箱育苗)
苗立枯病(白絹病菌)、苗立枯病(リゾクトニア菌)
1000倍
-
は種時〜発病初期
1回
育苗箱(30×60×3cm、使用土壌約5L)1箱当り希釈液500mlを灌注する。
ばれいしょ
黒あざ病
200倍
貯蔵前又は植付前
瞬時〜10分間種いも浸漬又は種いもに散布
7回以内(種いもへの処理は1回以内、植付後は6回以内)
青枯病
500倍
収穫3日前まで
6回以内
散布
きゅうり
苗立枯病(リゾクトニア菌)
800倍
は種直後
1回
1m²当り3L灌注
1回
キャベツ
株腐病、黒腐病、軟腐病
800倍
収穫7日前まで
5回以内
散布
5回以内
はくさい
軟腐病
500倍
収穫3日前まで
3回以内
3回以内
なす
青枯病
500倍
収穫前日まで
8回以内
8回以内
いちご
芽枯病、角斑細菌病
1000倍
収穫14日前まで
3回以内
3回以内
すもも
黒斑病
500倍
4回以内
4回以内
だいこん
軟腐病
500倍
収穫21日前まで
たまねぎ
腐敗病、軟腐病
500倍
収穫3日前まで
5回以内
5回以内
レタス、非結球レタス
すそ枯病、腐敗病、軟腐病
800倍
収穫7日前まで
3回以内
3回以内
しょうが
紋枯病
800倍
収穫14日前まで
4回以内
4回以内
みつば
立枯病
800倍
育苗期
1回
4回以内(育苗期は1回以内)
800倍
移植後 但し収穫21日前まで
3回以内
にんにく
春腐病
800倍
収穫7日前まで
5回以内
5回以内
ふき
白絹病
800倍
1m²当り3L灌注
5回以内(種茎浸漬は1回以内)
800倍
植付時
1回
30分間種茎浸漬
にら
葉腐病
800倍
刈揃え前まで
3回以内
散布
3回以内
てんさい
苗立枯病(リゾクトニア菌)
400倍
育苗中期
1回
1m²当り3〜6L灌注
1回
だいず、えだまめ
葉焼病
500倍
収穫7日前まで
3回以内
散布
3回以内
ねぎ
苗立枯病(リゾクトニア菌)
400倍
は種時
1回
1m²当り6L灌注
2回以内(は種時の灌注は1回以内、散布は1回以内)
軟腐病
500倍
収穫14日前まで
散布
芝(ベントグラス)
葉腐病(ブラウンパッチ)
1000倍
発病初期
8回以内
1m²当り1L散布
8回以内
500倍
1m²当り0.5〜1L散布
芝(日本芝)
葉腐病(ラージパッチ)
500倍
:
試験成績
野菜の細菌性病害(1)
キャベツ黒腐病(
Xanthomonas campestris
)
はくさい軟腐病(
Erwinia carotovora
)
レタス腐敗病(
Pseudomonas cicihorii,P.marginars,P.viridiflava
)
野菜の細菌性病害(2)
にんにく春腐病(
Pseudomonas marginalis
)
たまねぎ腐敗病(
Erwinia rhapontici,Pseudomonas marginalis
)
果樹の細菌性病害
ももせん孔細菌病(
Xanthomonas campestris
P
v.
pruni
)
かんきつかいよう病(
Xanthomonas campestris
P
v.
citri
)
他剤との混用事例
使用上の注意事項
散布適期
結球初期よりやや早めが適期です
。病害の発生生態からみた防除時期は結球初期ですが、バリダマイシンAを植物体内に十分取り込ませておくために、結球初期よりもやや早めの散布をおすすめします。
レタスに使用する場合、すそ枯病の防除を主体とし、多発生の腐敗病には効果が劣ることがあるので注意して下さい。
ふきに使用する場合は、種茎浸漬処理と植付後の潅注を組合わせて使用して下さい。
トマト、きく(秀芳の力など)
には薬害を生ずる恐れがあるので、かからないように注意して散布して下さい。
ボルドー液との混用は避けて下さい。
稲の苗立枯病に使用する場合、白絹病菌、リゾクトニア菌による苗立枯病には有効ですが、その他の菌による苗立枯病には効果が劣るので、注意して下さい。
かんきつのかいよう病に対しては効果がやや劣る場合があるので、他剤との輪番使用をすると、より有効です。
ばれいしょに使用する場合、
切断した種いもを処理する場合、切断面が乾いた後に行って下さい。
散布の際には、種いもを床などに広げ、種いも100kg当り2.5〜3gの割合で種いも全体が均一にぬれるように散布して下さい。
製造:
住友化学(株)